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そして訪れた、展覧会の最終日。
ついにーーー運命の選定が降り。
展示品の品質保持の為、若干薄暗く調整された照明の下で、その結末がさらされた。
「……これは、また」
「---へぇ。あなたと僕の同率ですか」
投票箱の上にあった貼り紙には、柏木と瑞樹の氏名が並んでおり。
その下に更に「この2人の手紙が甲乙つけ難かったので、最終的に直接話をしてから決めることにした」と記されていた。
「……まあ、初めから『彼女を一番愛してくれる人』という条件で決めることになっていたのだ。抽選や手紙の数ではないのだから、これもアリだろう」
物分かりの良さそうな顔で柏木が頷くのを、内心忌々しげに見つめた。
……2人にはそれぞれ「受付で、面談のため都合のいい日程を知らせて欲しい」との追記がある。
そこで恐らくは虚海本人と一対一で話す機会を作り、その結果で絵の持ち主が決まるという訳だった。
「いいでしょう。相手にとって不足はなし。『彼女』はきっと、僕を選んでくれるはずですよ」
瑞樹は、それだけ答えて踵を返した。
受付のある出入り口に向かう時、ほんの少しだけ振り返ると。
一人あの絵の前に佇み、何か呟くように口を動かした中年の男が見えた。
それはまるで、絵の中の『彼女』に話しかけているかのように。
ーーー本当に彼女に「自分を選んでくれ」とでも頼んだのだろうか。
「……っ。バカバカしい」
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