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ーーー1週間後。 展示会の終わった翌日、画廊の掲示板に貼られていた紙を見て思わず拳を握りしめてしまった。 ガッツポーズだ。 「この度の企画の当選者様を、以下の方に決定いたしました。 瑞樹 敬吾 様 おめでとうございます。 譲渡手続きの詳細に関しましては、受付の者にお尋ねください」 柏木の奴は、もうこの結果発表を見に来たのだろうか。 画廊内では既に次の展示の準備が始まっており、当然ながら飾られていた絵も全て撤去されて、運び出された後だった。 会期中に何度も会い見えた、あの初老の男の姿は見当たらない。 「……どうでも良いか。虚海は僕を選んだんだから」 軽やかな足取りで、受付へと進む。 頭の中では、もうあの絵を使ってどれだけの商売ができるかを考えていた。 よく街角である絵画の展示即売会のように、版画絵として複製しナンバーを振り、ネットの裏ルートでこっそり売ればいいか。 その方法なら、ナンバーに紐付けした相手の住所と氏名を控えた上で売れる。 余程の好事家でない限り、初めから転売目当てで買いに来るにはリスクが高い。 買った事実を喋れば、自分が違法の絵を手にしたと公表してしまうことになるので、相手の口から漏れる危険が低くなる。 「……まぁ、ゆっくり考えるとしよう」 複製、転売禁止などと言うふざけた条件は、初めから守るつもりなどない。 取り急ぎ、僕が虚海の初期作品を入手したらしい、という噂でも流しておけば良い。 あの絵なら、儲け話が向こうから歩いてやってくるほどの価値があるのだから。 譲渡の手続きを済ませると、すぐに自らの経営する会社へと戻る。 既に配送の準備は整っているらしく、この週末には届けられそうだということだった。 配送先は当然会社ではなく、自宅にした。個人として所有することになっているのだ。 あの絵の怪奇のことが一瞬頭をよぎったが、すぐに忘れる。 絵のモチーフが出てくるなんてこと。 そんな非現実的な話を、僕は信じない。
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