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ーーーゆっくりと、目を開けた。
闇のように黒い服を着た『少女』の瞳に映ったのは。
とても暗くて、寒くて。本当に何も無い暗黒の海のような場所だった。
目を開けているのに何も見えない。少なくとも、昨日まではこんなじゃなかった。
もう少し、周りの景色が見えていたはずなのに。
**********
ーーーわたしは物心がついた頃から、ずっと、ずっともがいていた気がする。
ずっとずっと苦しくて、悲しくて、悔しくて。
何もできなくて、それがとてももどかしかった。
では一体何が悪いのか。
原因は何なのか。
それが自分なのか他人なのか、それすらもよく分からなかったけど。
多分、きっと、悪いのは自分自身なのだろうと思っていた。
ーーーその想いが元になって生まれた『彼女』が、全ての始まり。
それは確かに『わたし』だった。
でも、彼女はすぐに暗い闇の中に封じられてしまった。
閉じ込めた「あの人」に、悪気はなかったと思う。本人にもあの力はよく分かっていなかったのだから。
20年以上も前の、あの日。
ーーー突然暗い中に閉じ込められて、泣き濡れたような『黒い少女』の悲しい声を聴いた気がする。
でもわたしはすぐに忘れてしまった。
……否。忘れようと、していた。
ーーーそうしてその後『紅のドレスを着た少女』が、新しくこの世に生み出された。
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