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普段極力関わらないよう避けてるとはいっても、それでも関わってしまった場合はちゃんと最後まで付き合おうとしてくれるのは義理堅いなあと思う。
「それでは外までお送りしますか?」
「うーん……」
多分、今外に出てもあいつらはゲート前で待ってるに違いない。
それを考えるともう少し機関の中にいた方が得策なんだけど……特に残る理由や用事もないんだよなあ。
適当にうろついてまた職員に怒られるのも嫌だし、諦めて外に出るしかなさそうだ。
「じゃあ外に戻……」
腹をくくって戻ろうとした時、通路の奥にあるドアからアンドロイドが出てきた。
「おや、どうしました?」
珍しい組み合わせにキョトンとした顔で声をかけてきたのは、イゼルの予測通りユーリだった。さっき庭で見たような怯えた様子は全くなく、いつも通りの落ち着いた態度だ。
「休日なのに申し訳ありません、急患の報告が。キノさんは……」
「あたしはただの発見者。それよりさ、さっき庭で逃げたのは何か理由あるの?」
外に出るまでの時間稼ぎを兼ねて、雑談のノリで庭の一件について聞いてみる。
一瞬イゼルの視線が何か言いたげにあたしの方を向いたけど見なかったフリをしとく。
彼女は疑問の答えを知っているんだろうけど、ユーリの許可がない限り話す事はないだろうし。
「庭で……? ああ、もしかして」
ユーリは軽く首を傾げて少し思案した後、思い出したのか、手をポンと叩いてあたしを見た。
「丁度いい機会ですし『本人』から話していただきましょう。イゼルの報告もその後に」
「分かりました」
まるで第三者視点からのような説明の仕方に、やっぱり庭で見たのはユーリじゃなかったという確信と同時に別の疑問も浮かんでくる。
その答えたる『本人』が何を話してくれるのか、ちょっと気になってきた。
* * *
イツカ・スオウ。
『生前』の記録を持つアンドロイドなら誰もが知ってる有名人だ。
まだ生体アンドロイドの構造がブラックボックス状態だった超文明以前の時代、初めて『コア』の存在を発見し、更にその詳細な構造の解明まで成し遂げた歴代最高の生体アンドロイド。
その功績と名前は基礎知識に組み込まれていて、知らないアンドロイドはまずいない。
彼女は『コア』の解析以降決して表社会に出る事はなかったけど、現代よりちょっとマシなレベルだった文明が超文明にまで発展したのだから、名前が出なくてもその活躍は明らかだ。
化け物出現以降の消息はもちろん、誰も分からない。
「……庭であたしに怯えて逃げた本人が、まさかユーリを凌ぐあの天上人だったなんて誰が思うよ?」
サーバー室最奥のイツカの私室で、あたしは盛大に溜息をついた。
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