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「その天上人という表現はいささか不服です。私もあなたも、同じアンドロイドではないですか」
「同じって言っても知名度も性能も桁が違いすぎるじゃん」
しかし何というか、古い話し方するんだなあ。
そんなあたしから漏れ出た感想を聞いたユーリ……の身体に同居しているイツカが眉をひそめて文句を言う。
『同居』している。つまり、ユーリもまた『正規統合者』の一人だったんだ。
イゼルの補足を含めて聞かされた話は驚きの一言じゃ終われない程とんでもない内容だった。
イゼルの話によると、『疫病』の現在の治療理論が確立して間もない頃にユーリが発症。
困惑と絶望に落とされた当時の研究機関の職員達に対し、ユーリは「理論に基づいて治療して下さい」と言って自分を被験体に使わせたんだそうだ。
当然職員の間で揉めに揉めたのは言うまでもないけど、最終的に当時から助手に就いていたイゼルが腹をくくって執刀に名乗りを挙げ治療に成功。そうしてイツカが『復元』されて今に至る。
その確率からしてあたしでもあからさまに虚偽を疑うような中身だけど、これらは正式に記録が残っているというから真実だと認識せざるを得ない。
治療が完了した順に割り振られる『正規統合者』の一番若い番号のデータには間違いなく、ユーリの名前と執刀者のイゼルの名前、そして『復元』されたアンドロイドの名前にイツカの名前があった。
「分かりました。逃げた事は謝罪しますので、あなたも私を一人のアンドロイドとして対等に見ていただけませんか」
「善処するよ」
何が分かったのかは理解しかねるけど、とりあえず接する態度を他のアンドロイドと変えないで欲しいって事は理解した。
……表に出てこない理由が、まさか傭兵が怖くて逃げてただなんて思わなかったよ。
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