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ユーリが報告データを読んでいる間、今日の間に得た情報を頭の中で整理する。
最大の驚きはやっぱりイツカが『復元』されていた事かなあ。彼女がいれば、アンドロイドの再興もぐっと早くなる。
それなら既に当時程とは言わなくても、もっと再興が進んでてもおかしくない。にも関わらず再興が進んでないのは、イツカの状態に理由があった。
曰く、イツカは性能と人格は問題なく『復元』されているけど、『記録』に欠落があるらしい。その欠落は化け物が現れた頃に近い程大きく、あの絶対的な冷静ささえ失い取り乱した程だったとか。
化け物が現れた原因と、イツカの欠落した『記録』に残された当時の出来事に関連性があるのは間違いないだろう、というのがユーリの推測だ。
余談として、あたしの療養中のお咎めが甘かったのは、取り乱して塞ぎ込んだイツカを落ち着かせるためにリソースを割いていたが為、他の仕事をする余裕がなかった。 というのが真相らしい。
もう一つ得た情報は、ユーリがあたしに出した依頼の本当の目的。
これもまさにイツカ関係で、欠落した記録の断片を修復・復元するための材料を探してもらう為なんだそうだ。
超文明時代の遺物を扱えるアンドロイドは『復元』されたアンドロイドに絞られる上、そこから更に化け物に対抗出来る性能となると、続々とアンドロイドが『復元』されている現時点でもあたしとキトくらいしかいない。
厳密には、化け物に対抗できる性能があっても、『化け物に一度殺された恐怖』というエラーで動けないアンドロイドがほとんどなんだとか。
つまりあたし達二人が揃って初めて適任と言える依頼だったんだけど、内容がまとまった辺りで機関を出て間もないキトの行方不明が判明。成功率が急に不安定になった中、後から『復元』されたアオ達をサポートにつける事で案を修正、キトのいない空白を埋められるだけ埋めてあたしに頼んだ……という経緯らしい。
つまり、イツカの欠落した記録が全て修復・復元されて、ようやく依頼が完了という事になる。
せっかくご指名で来た依頼なのに、あいつ、本当にどこで何をしてるんだか。
ちなみに最初からイツカの名前を出さなかったのは本人が『傭兵が苦手』という可愛い理由で、面白くて笑い転げてたら(ここではとても言えない理由で)凍結された実験の話を持ち出してきた。
光の速さで土下座して謝ったよ、うん。
普段どおりの顔なのに、見た瞬間不意打ちで氷入れられたくらいに背筋が冷たくなったよ……。
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