3 - ferias

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 作業場を抜け、雑多に家具が置かれた生活感漂う床張りの居間に上がると、除けても問題なさそうな物を片付けてアンドロイド一人横に転がれるだけのスペースを作る。  あたしは『生前』から居を構えるなんて事はなかったし、生活空間なんて寝転がれる広さがあれば十分。  仮占拠したスペースに座って水と栄養補給タブレットを噛み砕き、作業場から聞こえる炎の音と熱気を肌に感じながら目を閉じた。  * * *  メイスが完成するまでの十数日は、消耗品の細かい補充とおっちゃんのパシリであっという間に過ぎて行った。  「出来たぞ!!」  早朝におっちゃんの叫び声で叩き起こされ、眠い目をこすって作業場に顔を出すと、どうよとばかりに自信に満ちた顔でメイスを手にしたおっちゃんがいた。  ろくに休みもせず一日のほとんどを作業場で過ごしてただけに服や汚れが酷い。けど、本人は疲れ知らずな様子でとてもピンピンしている。そんな無茶して身体大丈夫なのかな?  少なくともあたしだったら倒れる確率の方が高そうだ。  「違和感ないか確認してみろ」  ずい、と押し付けられたメイスを握り直し、持ち上げたり振り回したりして具合を確かめてみる。  「前のより少し重いかな」  「お前が硬いっつってた百足型や獣型を殴っても折れねえ自信はあるぞ」  「……なるほどね」  違う材質のインゴットを追加で買いに行った理由に納得する。  前に直してもらった時に『全く同じ仕様の相棒を作るのは造作もない』と言ってたし、実際その通り直してもらい続けてたけど、対応しきれなかった化け物の話を聞いて改良してくれたという事か。  それで少し重くなった程度の誤差で済んだとなれば、改めておっちゃんの性能の高さを理解させられる。  「これなら力加減の修正もほとんどいらないよ、助かる」  「おう」  あたしの言葉を『納品完了』と受け取ったおっちゃんは居間の方に入ると、あたしの荷物から古い瓶を勝手に取り出して来た。  やっぱりあれが代金の酒だって分かってたな……。  「んじゃ、これはもらうぞ」  「はいはい」  これで一番大きな買い物は片付いた。  補充した消耗品や食料で膨れた荷物を拾い、メイスを背負って工房を後にした。  相棒の得物が手元に戻って、ある意味、研究機関で治療していた間より長かった休日は終わり。  これでやっとあいつを探しに行ける。  と思った矢先に再会したアンドロイドは、良くも悪くもあたしに色々な情報をもたらした。  「東の荒野で確かに見たっす。姐さんと同じ髪色をしたアンドロイドが、仲間を殺したんす」
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