クリスマス、予定ナシ!

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 食事をしながら、僕は机の下にスマートフォンを隠して必死でサンタクロースについて調べていた。あまり、お行儀が良いとは言えない。それにフライドチキンはスマートフォンを利用しながら食べるのに適した食べ物じゃない。  結局、手に入った使えそうな情報はフィンランドにサンタクロース村という村があり、そこに行けばサンタと話す事も出来るという事くらいだった。食事も終わりに差し掛かった時、姉さんが口を開いた。 「桜、叔父さんに質問があるんだよね?」  桜は、ぽかんと口を開けたまま首を傾げてしばらく何かを考えていた。右手にはフライドポテトが握られている。そして、小さい声で「そうだった。そうだった」と呟いてポテトを皿に置いてから、姿勢を正して僕の顔を見た。 「叔父さん、サンタクロースってどうやったらなれるの?」 「桜ちゃんは、何でサンタクロースになりたいの?」 「私ね、クリスマスが好きなの。町中がキラキラしてるし、クリスマスソングを聞くとわくわくするの。叔父さんもクリスマス好きでしょ?」  100点満点の笑顔が、そこにあった。 「そうだね。嫌いな人はいないと思うよ」  僕の顔を見て、姉さんがにやけているが無視する。 「これは想像なんだけど、サンタさんは一年間かけてクリスマスの準備をしてるの。世界中の人の喜ぶ顔を思い浮かべながら、せっせと情報を集めてプレゼントを作るの。それって、凄いやりがいがあって楽しいと思わない?」 「なるほど。確かに楽しそうだ」 「でも、どうすればなれるのか分からないの」 「僕はサンタじゃないから答えられないな。こういうのはやっぱり、サンタに直接聞くべきだと思うんだよ。フィンランドにサンタクロース村っていうのがあって、そこにサンタクロースがいるらしいんだ。そこに手紙を出して聞いてみるのはどうかな?」 「それ、ダメだと思う」  桜は首を素早く横に振った。 「私、今までサンタに手紙出した事無いけどプレゼントは届いてたもん。多分、偽物だよー。サンタクロースの名前を商業的に利用してるだけだよ。振り込め詐欺とかだよ、きっと。怪しいサイトに誘導されちゃうんだよ」 「桜ちゃんは、色んな事を知ってるんだね」 「テレビ見てたら、よゆーだよ」  なんでもなさそうに言って桜はコーラを一口飲んだ。  さて、どうしたものか。 「桜ちゃんはどうやってサンタが皆の欲しい物を当ててるんだと思う?」 「んー? 心を読んでるんじゃない? 小さい子は手紙とか書けないだろうし」 「じゃあ、こういうのはどうかな? 『どうすればサンタになれるんですか?』って事を強く心に念じて眠るんだ。もし、サンタが心を読めるなら、きっと教えてくれるよ」 「ホントにそう思う?」  つぶらな瞳が僕を捉えていた。 「思うよ。仮にサンタが来た時に桜が寝ていたとしても、きっとプレゼントと一緒に手紙で教えてくれるよ。だから、今日は早く寝ないとね。お行儀の良いところを見せとかないと教えてくれないかもしれないから」 「……分かった。そうする」  桜は頷いた。色々と準備が必要だった。
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