その11

1/1
前へ
/287ページ
次へ

その11

 わたしは牢屋に閉じこめられていた。この二日間、満足な食事を与えられていない。彼らはわたしがなにを食べたいのかわかっていないのだ。いまは亡き、わたしのパートナーも同じだった。わたしのパートナーは横柄で、プライドの高い人物だった。わたしと出会ったときもすべてを見下すような目をしていた。もっとも、パートナーは目が見えないので、わたしの気のせいかもしれないが。しかし、わたしはパートナーをよくサポートしたと思う。なにかにつけてわがままなパートナーを献身的に導いた。ただ、それにも限界がある。あるとき、パートナーとともに外へ出かけたとき、パートナーが勝手に道路へ飛びだした。そこへトラックが突っこんできたのだ。わたしはといえば、パートナーの巻き添えにならないよう必死にその場にとどまった。その結果、パートナーだけが死んだ。この事故を新聞はこう伝えている。盲導犬を連れた男性、トラックにひかれて死亡。  一人称の語り手が人間ではない話。このタイプの話はどんどんネタが消費されていっているので、いま作るのはむずかしいのではないかな。
/287ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加