その12

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その12

 その男性はさびれた駅を利用していた。男性の家は駅からさらに遠く、タクシーを利用して帰る。ひとづき合いもないため、駅の近くで男性を知る者はいない。そんなある日、男性は帰るのが遅くなった。ここまで時間が遅いとタクシーはもういないだろう。歩いて自宅を目指す。そこへ突然背後から殴られた。意識を失う。男性が気がつくと、服をはぎ取られている。残ったのは下着と靴下だけだ。こんなすがたでどうやって家に帰ればよいのだろう。だれかに見つかって警察に連行されれば、無実を信じてもらえるか怪しい。どうにかして服を調達しなければならない。途方に暮れている男性の耳に電車の音が聞こえてきた。数人の客が下りた。男性は決心する。あいつらのなかから手ごろなやつを選んで奪えばいい。  こういう話で、はじめはよくわからなかったんですが、可能性として、男性を追いはぎしたやつも男性と同じ目にあっていて、服の調達のために男性を襲い、その男性がまたつぎの標的を襲い……みたいな話かなと思いました。  こういう予想が外れたときってすごく恥ずかしいんですよね。小説読んで、自分なりにこんな話だったなと思って、巻末の解説読んだらまったく違うことが書いてあって「あ、そっち?」みたいになることがたまにあるので油断ならないです。
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