その23

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その23

 ある少女、ピアノを習っている。毎週、ピアノの先生の家までバスで通う。少女がバスに乗ると、数人の客がいた。そのうちのひとり、年老いた男性が少女に執拗に話しかけてくる。見知らぬひとなのになれなれしい。少女が恐怖を感じていると、客のおばあさんがその男性に注意してくれた。それでもなお男性は話しかけてくる。少女は目的のバス停より手前で降りることにした。一刻もはやくこの不気味な男性からはなれたかったのだ。少女がバスを降りると、なんと男性もいっしょに降りてきた。どうしようかと思ったとき、同じバスに乗っていたおばあさんが声をかけてきた。わたしといっしょにいきましょうと。少女はおばあさんのあとをついていく。しかし、まだ男性はついてきていた。おばあさんは自分の家が近くにあるから寄っていきなさいという。少女はそれに従った。おばあさんの家に入ると、机の上にティーカップが三つ置いてある。そして、玄関から堂々とあの男性が入ってきて言った。「首尾よく進められたじゃないか」  なごやかな風景描写が多く、ほのぼのとした話が進んでいくのかと思って読んでいたのですが、とんでもないオチでした。怖い怖い。
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