その4

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その4

 ある男、殺しの依頼を受ける。じつは刑務所から出てきたばかり。以前も殺しの仕事をしていたのだが、目撃者を見逃して最近まで塀のなかにいた。そんな理由もあって依頼を選ぶ余裕はない。さっそく標的のもとへ向かう。そこは山奥、事前の情報によればひとはいないという話だったが、標的が住んでいるとなりにもう一軒家が建っていた。その隣家の庭に老婆がいるではないか。男は悩んだ。近くの食堂に入り、実行するかどうかを考える。そこへあの老婆が犬を連れてやってきた。盲導犬のごとくハーネスをつけている。食堂の店員がつぶやく。かわいそうに。男がなにがと聞くと、店員は目が見えないんだと答えた。躊躇していた男は殺しの実行を決意した。翌日、ひと目につかないよう標的の家に忍びこみ、任務を遂行した。家を出ると、あの老婆がこちらに顔を向けているが、目が見えないのだから心配はない。男は車で帰った。しかし、すぐに警察に捕まってしまう。どうしてだろうと疑問に思う男の前に、あの老婆が面通しのためあらわれた。かわいそうな盲目の犬を連れて。  目が見えないのは犬のほうだったんかい!っていう短編ですね。わたしの予想では標的が盲目なのかと思って読んでいたのですが、みごとに外れました。
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