その5

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その5

 ある考古学者の男性、ひとりで地下深くにある遺跡の発掘に出かけ、目当てのものを発見する。そもそもなぜひとりで来ることになったかといえば、教授に知らせれば手柄を横取りされてしまうからだ。しかし、ひとりで遺跡に来るのは容易ではない。金が要る。そこで、男性は認知症の母親の口座から勝手に必要な金を引きだした。世紀の大発見をすれば十分返せる算段だ。そして、男性は発見した。真っ暗な地下の遺跡をさまよい、古代の重要な文書を。男性がその品をよく観察しようとしたところ、うっかり懐中電灯を落としてしまった。その衝撃で懐中電灯が壊れる。あたりはたちまち暗闇になった。地下深くに閉じこめられたわけだ。明かりがないと、とても地上には出られない。一時間近くさまよって、やっとたどり着いた場所である。ポケットを探るが、あったのはマッチが二本だけ。男性は目の前の文書に目をつける。これをすこしずつ燃やしていけばぎりぎり地上へ出られるかもしれない。しかし、出たところでなにが男性を待っているのだろう。どの道を選んでも地獄である。  まあ、こういう羽目になるでしょうね。思いついたもの勝ち。
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