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「何でか、毎回、会う度にそのルーティンになったよね?」
「でもさ。俺、いつも、麗に嫌って言われたらどうしようって、怖かった」
「じゃあ、もし、私がその時、嫌って言ったら、一也はどうするつもりだったの?」
記憶が正しければ。
一也の誘いを結局一度も断らず、漏れなく一也と寝たはずだ。
「俺、言ってたと思う。麗が好きって」
「何それ?」
私は首を傾げていた。
「俺、麗に好きって言わせたかった。だから、言わなかった。俺の意地だったよ」
「でも、私が拒んだら何で言おうと思う訳?」
「俺、そしたら、もう後がないから。俺にとって、麗が俺に抱かせてくれるって、その余裕だけで俺は、麗に安心出来たから。今思うと、馬鹿だけどね」
でも、だとすれば、それは、自分も一緒だ。
私は、もう誰かに好きなんて、言いたくなかった。
期待したくなかった。
傷付くのが嫌だったから。
意地っ張りも、あまのじゃくもやめて、一也は私に好きって言ってくれたんなら。
臆病な癖に、今夜好きって言ってくれたカズヤを責める権利、私にはない。
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