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家庭教師は大学卒業まで、続けたがそれきり、身体の関係はなかった。
その後は5年以上も音沙汰なかったのに。
ただ3年程前、一也の家族の問題(彼の従兄のソウとユキが原因だった)で、個人的に依頼を請け負って1年前後。
もう一度だけ、いや2.3度、いや依頼が完全に完了するまで、回数は片手じゃ足らないが両手に収まる程度かな。
身体の関係を持った後は、また今日の今日まで会う事もなかったのに。
「ねえ、麗。ずっと、好きだった。 ソウとユキが、今後二度と俺に迷惑かけないって言うからさ。 次、麗を頼りにするのは何年後になるか分からない。俺、次はおじさんになってるかも知れない」
「一也。私、あんたより5つも年上なんだけど」
「麗はいくつになっても、きっと綺麗だよ」
「じゃぁ、おばあさんになるまで待てる?」
「良いよ。でも、麗がおばあちゃんになるのを待って、 『On se marie(オンスマリ)』でプロポーズするから。だから、恋人になって、俺と家庭を築こう?」
フランス語……。
結婚の順序を気にしない人の多い国ならではの、プロポーズ。
一緒に暮らして子供が出来てから、子供が大きくなってから、結婚する国の事実婚夫婦が使う事が多い表現だ。
「付かず離れず、10年以上やって来たね」
「長くて短くて、正に、麗が尊いと思い知るには充分すぎる10年だったよ。でね、ちょっと学習したんだよ、俺」
「どんな?」
「『意地っ張り』は損をして、『素直になれないあまのじゃく』は、恋人を泣かせるんだって」
「何それ」
「聞きたいなら、続きは俺とベッドで話そう」
もしかすると、私はずっと、この子に恋をしてたのかも知れない。
一生懸命私を口説く一也が、どうしてこんなに今日は愛おしいのか不思議だったけど。
私の人生のほとんどを、彼が埋め尽くしている。
一也は深い青い色が好きだった。
特に色に固執しないが、好きな色は深い青が好きなんだ。
私のしている青いピアスの色が理想的だと言ってたのが心に残って、私はいつもその青のピアスを付けていた。
彼の事を好きだとは思ってなかったが、彼が好きだと言ったピアスだったから、ずっと付けてた。
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