四、四神封印 の巻

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四、四神封印 の巻

猪が迫り来る中、龍神様が憑依された黒猫モモには何故か封印術が施されていて龍神様はモモの体から抜け出る事が出来ません。 猪は猛然とモモに突進して来ましたが、すんでのところでモモは横っ跳びでこれを躱しました。 '何故だ、何故この様な封印術が仕込まれているのだ、このには!? 龍神様の疑問を他所に、突進を避けられた猪はモモに向き直り脚で地面を前掻きをしています。 'しかし今はを気にしている場合ではなさそうだな… どれ ' 龍神様はモモの体から出られない事を悟ると意識を目の前の猪に向けられました。 すると… モモの体から蒼色のオーラが立ち上り始めました。龍神様の闘気が体の外に噴出しているのです。 'たかだか猪如きに我の力を使うのは、いわゆる『大人気ない』と言うものかも知れぬが猪に殺られる訳にもいかんでのう ' 猪は目の前の黒猫の変化に気付き、前掻きを止めました。 'うむ、格の違いを悟ったならば尻尾を巻いて立ち去るが良いぞ ' 龍神様は猪にも怪我をさせる事無く戦意を失わせて追い払うおつもりでした。しかし… 突然、猪がを体から噴き出させました。それはモモの体から立ち昇っている闘気のオーラよりも激しく、巨大なものでした。 '何!? この猪、ただの猪ではないぞ!… この邪な気配は… そうか、そういう事か ' 龍神様は何かを感じ取られたご様子でした。 'モモよ、我がお前の小さき体を本気で使うとお前はただでは済まないだろうがやむを得まい。少し我慢してくれよ… ' それまで龍神様の精神支配を受け付けず、言う事を一切聞かなかったモモの体が初めて龍神様のコントロールを受け入れます。 瞬時に猪が纏う紫黒の闘気とは比較にならない巨大な青龍を象った闘気が昇りました。 モモは青龍と一体になり、稲妻の様な速さで猪に飛びかかるとその紫黒の闘気をモモが、青龍の牙が食い千切りました。 いえ、一瞬で猪が纏っていた邪なオーラは龍神様の力によってその体から引き抜かれたと言った方が正確でしょうか。 すると唐突に猪は我に返り、慌ててその場から逃げ出しました。 立ち去る猪の後ろ姿を見つめるモモの口に咥えられた紫黒の邪な気は弱々しくなっていき、霧散してしまいました。 '済まぬなモモよ… 体が傷付いて暫く動けぬよな… ' モモから立ち昇っていた青龍の闘気もスーッと消えました。 龍神様は、猫の身体では到底受け止められる筈もない動きで傷付いたであろうモモの体を癒そうと、御自身の生命エネルギーを使おうとされました。 ところが。 モモは何事も無かったかの様に自らの意思で屋敷の縁側の自ら開けたサッシの隙間から部屋に入ると、キャットタワーをピョンピョンと登り自室のクッションに落ち着いたのです。 'なんと!? ' モモが痛みを感じれば龍神様もその痛みを同様に感じられるのですが、その体はまるで痛くありません。 '… モモよ… お主は誰ぞ? ' 龍神様はこの謎の黒猫に問い掛けました。 しかし返事はありません。 モモは大きなあくびをすると頭をクッションに降ろしました。 'お主、わざと我を無視しているであろう? 体の制御もお主の意思で動いておるのだからな。それに全身の筋繊維が全く傷付いておらぬ。 誤魔化さずに返事をせぬかモモよ!' モモは変わらず返事はありません。 'やれやれこのタヌキ猫め… まぁ良い。しかし先程の猪に取り憑いていた邪なる者の正体も気になるのう… それにこの体に施してある完全では無いが我すら封じる封印術… これは恐らく ' 「ん? モモ?外に出たの~?」 司が少し開いたままのサッシに気付きこちらに近付いて来ました。 司は一旦サッシから頭を出し庭を見渡しました。 「ミャア~」 「なんだモモ居るじゃん」 司はキャットタワーのモモの部屋から聞こえた声に振り向くと、サッシを閉めました。 「モモも窓閉めてくれると助かるんだけどなぁ」 司は溜息を着くと、サッシの鍵を掛けてカーテンを引きました。 司は足の裏が砂でザラつくのを感じました。 「モモ~、そろそろお風呂に入ろうか。明日はお風呂にするからね!」 '風呂とな!良い、良いぞつかさ!明日とは言わず今からでも構わぬぞ! ' そんな龍神様の心の声が司に届く筈もなく、司と言えばモモを風呂に入れる面倒を考えてゲンナリしながら去って行きました。 龍神様は折角の風呂が明日になった事を残念に思われましたが、司の反応に疑問を抱かれました。 'つかさは先程の猪には気付いておらぬのか。庭であれだけ騒いだと言うのに。 屋敷の人間が気付かぬとは益々気になるではないか。 これは… 我も封印のせいでこの体から離れられぬし色々と気に掛かる事が多いからのう… 本格的に調べてみる必要があるのう ' 龍神様は考えておられました。 このについて。 自身が目を覚ますと現れた新たな『邪』の気配の正体。 そして… 誰が、何故、このを施したのか? '我がこのモモに憑依したのは偶然か、はたまた必然か… ' 沢山の謎を抱えたまま、モモと龍神様の冒険が始まりました。 と言う事で今日のお話はこれにてお終いです。 モモと龍神様を一体何が待ち受けているのでしょう? それは次のお話で。
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