現代日本の正月における雑煮の概念とは

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 箸を持って、手を合わせていただきます。  僕はさっさと田作りをつまみ始めたけど、玲次はがっくりと首を項垂れてる。反省してるのかな。視野の狭さを。 「玲次、食べなよ。冷める」  反省は後ですればいい。するかな。  これ、意表をついたトムヤムクン味とかじゃなくて、普通の和食の味だから、食べたことないって言っても食べられるでしょ。  「……ごめん」  思わず手が止まる。  あれ? 謝った? 玲次が? 自分から?  珍しい。いい天気だけど、雪降るかな。寒いし。  僕がびっくりして黙ってると、玲次は顔を上げた。えらい真剣な顔しとるがね。 「悪い、文句言って」 「いいよ。知らなかったんだろ?」 「知らなかったけどな」 「じゃ、これで覚えただろ? 安永家のは難しそうだから、僕は覚えないよ」 「今度、俺が作るわ」 「お、いいね」  僕が笑顔でそう言うと、玲次の表情がやっと緩んだ。  だって、美味しそうじゃん? 白味噌で具沢山のお雑煮。楽しみが増えるよ。 「来年どうなるかわかんねぇから、明日でも作るか」 「やったね。楽しみ」  玲次、割と料理のセンスも悪くないんだよね。いざとなったら実家に電話すればいいわけだし。
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