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 十二歳の時、僕はこの街に来た。  父親から逃げるみたいに、母さんと二人で。  DVなんてありふれた話かも知れない。でも、まだ六年生の僕にとって、父親の暴力を見るのはずいぶん心に堪えた。  転校もした。  あと一年で卒業って時期に、急に転校なんて。  家は滅茶苦茶で、母さんはずっと泣いてて、そのしわ寄せが僕にきて。  理不尽だよ、ほんと。  クラスの人は最初は仲良くしてくれたけど、僕は孤独だった。サイズが合わない服を無理やり着てるみたいで、心が別の場所にあるみたいで、居心地が悪かった。  そのうち、父親の噂が広まった。僕に話しかける人は誰もいなくなった。  僕は、学校に行かなくなった。
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