この人生から逃げたい! いっそ死にたい! と思ったときに、あやしい取引を持ち掛けられた件

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 美しい容姿とスタイル、さらには才能に恵まれ、若くして有名人としての地位を確立した。富も名声も手に入れた。それが、私。多くの人から愛され(かしづ)かれ、そして羨まれ―他人から見れば、何一つ問題のない人生に見えるんだろうな。  でも、現実は違う。憎しみだけが渦巻く複雑な家庭環境に、仕事では足の引っ張り合い。(ねた)(そね)み、エゴサをすればバッシングの嵐。…そんなのは一切無視して、自分を好きでいてくれる人のほうだけ見ればいいじゃない? と思うかもだけど。今度は、こうした、“私の味方です”って顔で近づいてくる人たち誰もかれもが、私の財産や地位を利用しようとしているように見えて。そう、どっちにしろ、片時も気が抜けない。  こんな生活をずっと続けていると、正直、神経はぼろぼろになる。何もかも投げうって、逃げ出したくなる。ここから抜け出すため、いっそ死んでしまおうかとすら思うこともある。そう、発作的に。         ***  その日も、最悪の気分で帰宅した。こんな時は、死への誘惑が強くなる。眠るために処方してもらったあの薬、あれを全部飲んだら、この世界から抜け出せるのかしら―? そんなことを考えながら、がらんとした高級マンションのロビーでエレベーターを待っていると、背後に人の気配がした。このエレベーターに乗るのは、私だけのはず。誰? 何の用?  目の端で見ると、それは見知らぬ若い女だった。少し笑って会釈して。そして言った。 「ねえ、私と、取引を、しません?」
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