これはただの****だ

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これはただの****だ

私は昔から考えるのが好きだった。小学1年生の時には既に、死とは何かについて考察しているくらいのものだった。 ちなみに死とは無であり、自分も他人も認識できなくなり、今まで積み重ねてきた全てが消えることだと思っている。自分が大切にしてきたものがわからなくなることを想像すると、大人になった今でもゾッとする。 そんな私が自分の人生を決定付けたのは、小学5年生の時だった。何でもない下校途中、いつも通り考え事をしていた私は、ひとつの答えを見つけた。 「私が1番嬉しいことは、目の前の人が笑ってくれることだ」 だからといって、ここからお笑い芸人を目指すわけじゃない。「目の前の人」について更に定義を求めると、それは身近な人になっていき、最終的には家族になった。 「家族を幸せにする」 ありふれたフレーズで、全くありふれてないもの。何故なら、おおよそ人間は自分の欲望のために生きているからだ。しかし、私の人生で最も大切なことはこの時これに決定され、以降一度もぶれることはなく、今の今まで生きてきた。 無我夢中でこの目標のためだけに生きてきた。それだけの理由で、県内一の進学高に行き、旧帝大に合格し、年収一千万を超えるサラリーマンになった。もちろん本当に優れてる人や努力してる人はたくさんいて、私の人生程度は大したものではないと思う。ただ、あの頃想像してた通りに、一定レベル家族を幸せにするに足る力を手に入れたと言っても、過言ではないだろう。 ちなみに、幸せにしたい「家族」も、苦労して手に入れている。こんな他人に依存したものを人生の目標として掲げてるくらいだから、当然重い奴になる。貢ぎ癖のある束縛人間に、同じだけの気持ちを返してくれる人はそうそういない。多くを求めているつもりはなかったが、相手探しは難航した。もう人を愛することさえも難しく感じてきた頃、運命の人と出会うことができた。紆余曲折あって、同じだけ愛し愛される関係に今はなれている。 そして非常に困っている。 何故なら私は、人生の目標を20歳半ばで既に達してしまっているからだ。正直これから何を糧に、どう頑張ればいいのかわからない。徒に人生を、つまり命を消費してしまっている。その事実に焦りはあるが、正直幸せすぎて頭が回らない。 だから私は筆を執った。 目標とは無関係に夢中になれたもののひとつが、創作活動だったからだ。高校時代では文芸部にも所属していた。あの頃は湯水のように創作意欲があったものだが、今は何も思いつかない。受験勉強を期に、一度捨ててしまったものは易々とは戻ってこない。だからまずは自分の中で確かなものを文字にすることから始めよう。 これはそんな私の記念すべき第一作目。 つまり、これはただの自己紹介だ。
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