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しばらくして弘平が一人暮らしの部屋を引き上げて、家に戻ってきた。
「どうせろくなもん食べてないんだろ」
弘平はそんな風に言って、どこで覚えたのか手料理を披露してくれた。
「弘平の妻になる人は幸せだな」
「何言ってんの?」
「料理上手な旦那さんって人気があるらしいぞ」
「そんなんできなくても元からモテるっつうの」
照れ隠しなのか、そんな調子のいいことを言う弘平に笑った。
妻が生きていた時はほとんど会話もなかった弘平と、よく話すようになった。
今更かもしれない。だけど、僕は今ある幸せを大切にしようと思う。妻が僕に家族の大切さを教えてくれたから。弘平がいずれ本当に家を出て行く日まで。
妻が残した歌を聞きながら。
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