出会い

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出会い

 命だったモノたちが床に転がり、部屋は血に染まっている。  咽せかえるような臭いに吐きそうになった思い出が遠い過去のように感じる。  しかし、今はそんな事よりも水道水で返り血が付いた箇所を洗う方が先決だ。 「これは、シミになりそうだ」  自分でも今日の仕事はイマイチだったと評価を下す。  年か疲れか、原因は不明だが調子が出ていない事は確実に分かる。  標的を始末した際に血が付いたなど、昔の自分に話したら失笑されるだろう。 「……はぁ……」  つい溜息が出てしまう。  こういう日は気分転換が必要だ。  後始末を業者に任せ、車に乗る。  依頼場所から一時間もしないうちに、いつもの店に着く。  カラン、と来客を告げるベルの音が鳴る。  この音を聞いただけで、落ち込んでいた心が少しだけ浮上する。 「いらっしゃい、アサシン。いつものかい?」 「ああ。マジシャンが煎れてくれるコーヒーが一番好きだ」  色々な店を試したが、やはりこの店が一番落ち着く。  酒は飲まず、コーヒーで一日を終える。  それがアサシンとしての俺の日課だ。
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