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とある王城の地下に広がる広大な間。
地下室と呼ぶには仕切りも家具もなく、一定の間隔で壁と天井に掛けられた明かりでどうにか空間全体をぼんやりと照らし出していた。
どう考えても日常的に使うことのないであろうそこに今、10数名の人数が集まっていた。
「殿下。準備が整いましてございます」
黒衣の男が壁際に立つ青年に頭を下げる。
殿下と呼ばれた彼だけが、唯一黒いローブを纏わず、身分が高いであろう豪奢な身なりをしていた。
「よし、すぐに始めよ」
「は」
命じる声のまま、黒衣の男たちが一斉に何やら呪文を唱え始める。
すると、何もないはずの床に、とてつもなく大きな陣が浮かび上がり、鬼火のように青白く光り出した。
それは魔法陣ではなく召喚陣であることは、高位の魔術師であれば理解できただろう。
そして、それが禁忌であるということも――
「ふはははは!勇者と聖女、どちらも揃って同じ地にいるとは!何たる好機!これこそ運命が俺を選びし証だ!!」
青年は、陣の光が増していくのを、笑いながら見守っていた。
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