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輝きを増す陣。
それに比例して、黒衣の男たちの全身から靄のようなものが発生し、陣に吸い込まれていった。
それは彼らの持つ魔力だった。
激しく消耗しながらも詠唱を続ける男たち。
禁忌の術であろうとも、己の主の命令なのだ
しかも、これに成功すれば、自分たちにどれほどの利益と栄誉が与えられることか。
伝説の勇者と聖女。
この世界のすべてを救うと言われる最強の称号に相応しい者は、世界を渡って訪れる――そんな言い伝えが今、実現しようとしているのだ。
しかも、その勇者と聖女を同時に出現させ、青年の側に付けるという千載一遇のチャンスなのだ。
「ははは!これで誰も私が王に相応しくないなどと口にしなくなるだろう!次期国王はこの俺だ!トリュステンなどではない!!」
青年の声に応えるかのように召喚陣が激しく明滅したかと思うと、中央にぼんやりと複数の人影が浮かび上がった。
魔力を枯渇するまで使い切った男たちが順に倒れていく。
しかし、青年は自分のために尽力してくれた男たちに目もくれず、次第に輪郭が明確になっていく人影だけに気を取られていた。
「おおお!やったぞ!勇者と聖女を召喚した!」
高らかに言い放つ青年。
それに対し返ってきた言葉は。
「マジか……」
ピンクに近い紫のワンピースの裾をぎゅっと握り、亜麻音(あまね)は思いっきり不機嫌な声を出した。
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