episode10 アラテガワvsお貴族様

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前に出たパルマさんがローブを取ると、髪が途中から羽になっているその姿にどよめきが起こりましたが、それもまた想定済み。 異形だのなんだのと言う輩もいるだろうけど、私みたいに綺麗だなーって見惚れる人もいるんですよって説明してあります。 特訓の成果かパルマさん、上手く顔色一つ変えませんでした、偉い! 「魔王国の副将軍にして侯爵家当主、パルマ・ハルピュイアだ。我が主君はことのほか異世界人を気に入り、またこの国の女王陛下とも歓談の機会をもてたことを非常にお喜びである。女王陛下、大公妃、そして我が魔王陛下の間に新たな交流と互いへの理解が生まれることを望む」 しーんと静まり返った中、響くパルマさんの声。 それを女王陛下と大公妃が後押しする。 「私たちは無知無理解による再びの戦火を望みません。副将軍、どうぞ魔王陛下によしなにお伝えください」 「ヴァンダールフトだけでなくフォトキエをはじめとする諸国も皆、平和を望んでおりますの。ユーザニア、ミヴォラ、ジュニオンへは女王陛下と私が必ず説きます。どうかこれからも私たちと良き関係を築いていただきますよう切にお願い申し上げます」 ヴァンダールフトとフォトキエと魔王国の三国が、今この場で固く結ばれた瞬間。 そうね、ここで空気を読まないで魔族撲滅なんぞとは言わないわよね。 でもって、ここで言わなかったってことはこれを承認し自分たちもそのように理解して対応していきますってことだからね。 異世界人を責めている場合ではなーい。 誰かもわからない勇者と聖女にかまっている場合でもなーい。 正体不明の勇者と聖女より、目の前にいる他国の大公妃と魔王国の副将軍の方がよりリアリティがあるわけです。
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