episode1 平穏な日常は簡単に崩れるもんだ

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私より2つ上のお隣さんの長男坊の英也は、超超超がつくほど秀才で、親のスーパー自慢の息子だったはず。 東京の我が国最高学府なんぞに入って、末は官僚か大臣かなどと周囲に期待されていたというのに、3年生になるときに突然こっちに戻ってきて以来引きこもってる。 都会で何があったのかなんて知らないよ、こっちは地元の国立大1年生だもん、しかもぎりぎりだったし。 けど、秀才なのに親切でさ、勉強教えてくれただけじゃなくたくさん一緒に遊びもしたのになあ、英ピ。 あの頃は英にいって呼んでたんだけどなあ。 今じゃすっかり抜け殻で覇気も何もあったもんじゃない。 マジ、何があったんだ、英ピ。 たまに顔を合わせたときににい呼びじゃなくピ呼びなのは、私がからかうことで少しでも反応してくれたらって思うからと、そんなぐだぐだなおまえは兄じゃねえよって思う気持ちもあるからで。 都会怖いな、英ピをこんなにしちゃうなんて。 か弱い乙女な私はイベントで行き来するだけで十分だわ。 「おまえ、これから大学?」 大学ってワードでどよんとした目になるんじゃない。 表情マジで死んでるぞ、そんな顔をするくらいなら聞くな、聞いたら答えないわけにいかないじゃまいか。 「うん。交通の便が悪くてまいっちゃうよ。しかも今日は1限からあるし」 バスで駅まで行って、それから電車、んでもって最寄り駅から徒歩10分。 さらに1限の前に大学構内のコンビニにも寄りたいし。 うう、カフェイン摂りたい、カフェイン。 このままだと確実に落ちる、意識が。 「おお。英也くん、亜麻音ちゃん。おはよう」 英ピと別れようとしていたところに、ジャージ姿の生駒(いこま)さんが。
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