伝えたかった言葉

2/4
前へ
/203ページ
次へ
痛い目を見るかもしれない、と変な予感が一瞬脳裏をよぎりながらも、返信ボタンを押した。 『どこで?』 『俺んち』 『20分で着くから』 手早く支度をして、言葉通り20分後には誠が住むマンションのインターフォンを押していた。 『……はい』 「私。朱里だけど」 『開けとくから上がってきて』 玄関ドアの前で深呼吸をして、息を整える。 「……おじゃまします」 「どうぞ」 何度も訪れた、誠の部屋に足を踏み入れた。 見慣れたはずの空間なのに少し変わってみえるのは、もう自分が恋人ではないからだろうか。 「何か……用事、とか?」 ソファに身を沈める誠と距離を取って、リビングの端に立ち尽くしたまま訊ねる。 「ん、この前の……言い過ぎたなって思ってて。ごめん」 それをいうならお互い様だと思う。 「ううん、私こそ」 軽く頭を左右に振って答えた。 「でさ」 ――来た、本題。 無意識に背筋がのびる。 「元に戻らない?俺たち」 真っ直ぐな視線を向けられた。 (え……っと、元サヤってこと?) 「やっぱり朱里のこと好きだから」
/203ページ

最初のコメントを投稿しよう!

494人が本棚に入れています
本棚に追加