グリフォンの羽毛布団

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グリフォンの羽毛布団

 「パパは数日間、お店を開けます。それまでお店のことを宜しく頼みます」  父親は家を出ていったきり、戻ってこなかった。 とりわけ、お店の景気がすこぶる悪いわけでもなく、すこぶる儲かっているという訳でもないし、母親と激しい喧嘩をしたわけではないが、一度だけ口喧嘩をしたことがあった。 「将来パパの店を継いで欲しい」と頼まれたが「わたしは今、やりたいことがある」と突っぱねたのが気にいらなかったので、父親はひどい剣幕で、わたしを怒鳴り散らしたことだ。 父親はよろず屋を経営しているが、わたしは経済のことがわからないので、アルバイトとして商品のポップ作りをして、お手伝いをしている。 商品棚に並べた「ドラゴン革のバッグが欲しい」とおねだりしたら、自分で稼いでから改めて買いなさいといわれたのが、始まりだった。 「高い防御力を誇るドラゴンの革を縫って作ったバッグです。丈夫で軽く、収納性も高いので長持ちすること間違いなし! 二万ゴールドでいかがですか?」 自分が買いたい商品に、一番最初にポップを作ったが、父親は何故か浮かない顔をしていたのを、よく覚えている。 お客さんの購買意欲に訴えるには? どう書けば興味がわくポップが作れるの? 変わったことを書くのか、ためになることを書くのか、わたしはポップのひとことに随分頭を痛めた。
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