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初めに言っておくが、僕は変態ではない。時代の流れに乗っただけだと言いたい。
今は2080年。ロボット、アンドロイドの技術革新は遂に極り、その知能、容姿、身体能力はついに生身の人間と見分けがつかなくなった。
不気味の谷、という言葉をご存じだろうか。人形やロボットがデフォルメされたものから写実的になっていくと、ある時点でとても気持ちが悪く感じる現象である。恐怖や嫌悪さえ感じる。中途半端に写実的な人形は可愛くないし、死人のように不気味だ。現在製造されているリアルヒューマノイドは、まるで生命を与えられたかのようにその谷を越えたのだ。
つまり何が言いたいかと言うと、僕は友人の勧めに乗って家事用アンドロイドを購入してしまったのだ。その家事用というのは建前で、実質的にはセクサロイドである。家事をするだけでなく恋人として振る舞い、夜の相手もしてくれる。もちろんそういう機能が付いていない純粋な家事用アンドロイドもちゃんと存在する。
BTOとはBuild To Orderの略で、受注生産と訳すことが出来る。元々パソコンの通販で盛んだった手法で、使用目的に合わせてパーツをアップグレードしたり、逆に安いものに替えたりしてカスタマイズすることが出来る。また、不要なソフトウェアやサービスを省けるという利点があった。アンドロイドにおいては、直接パーツを選ぶよりは機能と容姿を細かく指定することによって必要なパーツが決まっていくことが多い。
ショールームにも吊るしの完成品アンドロイドは売っているが、せっかくの高価な買い物なのだから徹底的に自分好みにしたかった。価格としては新車を購入するのと同じくらい。そして自動車と同じようにそのグレードはピンからキリまである。僕は自動車を購入する代わりにアンドロイドを手に入れたのだ。
今日は遂にアンドロイドの納品日だ。土曜日の午前中指定。もう11時を過ぎた。12時までは午前中だが、楽しみに待っている荷物に限って昼前ギリギリに届くのは何故だろう。仕方がない。ゲームでもしてゆったりと待とうと思ったが、何をやっても集中できず、何も手につかない。
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