ノウヒン

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「それと食器とカトラリーが足りないですね」 「後でラスカに買いに行きましょう。実は明日お客が来るんですよ」 「そうなんですか。どなたがいらっしゃるんですか?」 彼女はパスタを鍋に投入してから、フライパンで玉ねぎを炒めはじめた。 「元々オンラインゲームで知り合った人なんですけど、アンドロイドオーナーの先輩なんです」 「もしかして、その方の影響で私を?」 「そうです。勘が良いですね」 フライパンから炒めた具材を一旦取り出して、今度はケチャップとウスターソースを合わせたものを煮立たせている。甘い香りが立ち上がる。簡単なものをと言ったのだが、彼女はずいぶん手間をかけて作っている。 「明日は何人でいらっしゃるんですか?」 「二人というか、その人とアンドロイドです」 「お食事を用意しますか?」 「そうですね。お昼前に来る予定なので、お願いします」 「その方がどんなものを好まれるかご存じですか?」 「ジャンクフードとかファストフードみたいなものは好きみたいです」 「ピザ、ハンバーガー、フライドチキン、フライドポテトとかですか」 「そんな感じですね。それと甘いものも」 「いつも召し上がっているのなら少し工夫が必要ですね。オードブルみたいにしてみますか」 「いいですね。パーティーみたいにしましょう」 「楽しそうですね。その方はお酒を飲まれるんですか?」 「はい。電車で来るんで飲むと思います」 「それならば、おつまみ的なものも用意しますね」 茹で上がったパスタをフライパンに移して具材、ソースと和える。その動きはベテランの料理人のように無駄がない。
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