鶴の恩返し つづき

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 与作は鶴が空高く舞い上がりやがて雲間に消えていくさまを呆然と見守りました。そして鶴の姿が完全に見えなくなるとその場にぺたりと座り込み、大粒の涙を流しながら男泣きに泣きました。  Curiosity killed the cat. 「好奇心が身を滅ぼす」という言葉がぼんやりと頭をよぎります。それとともに浮かんできたのは、そのことわざを教えてくれた、祖国イギリスの懐かしい祖母の顔でした。 「グランマ!」  与作は思わず空に向かって叫びました。 「この喪失感を癒すには、あの懐かしの故郷に帰るしかない」  思い立ったが吉日、与作はさっそくスーツケースに身の回りの物を詰めパスポートを懐に突っ込み、目にかかる金髪をかき上げながら故郷であるロンドンに帰るため空港への道を急いだのでした。 The end ※補足 与作の生い立ちに関するあらすじ  与作はじつは Joe Sack(ヨサクという名は、本名であるジョー・サックが日本で訛ったもの)という生粋のイギリス人で、数えで八つの年に訳あって日本のとある農村部に引き取られた。  金髪碧眼という異端な容姿のために虐められることもあったが、優しい養父母の元でスクスクと育ち立派な青年となったところで鶴を助け、その化身である美しい娘と恋仲となる。 いろいろあって機織り覗かれ鶴逃げる。  からの、つづき。 完
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