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「かぐや姫 その後」
月に帰ったかぐや姫は、久しぶりに見る天上の暮らしを楽しんでおりました。
かぐや姫の故郷である月の世界というものは、人の世で言うところの極楽浄土、西洋では天国と申されるところで、見渡す限り美しい花々が咲き乱れ芳しい香りが漂い、手を伸ばせばすぐに舌がとろけんばかりの究極に美味な果実がいくらでも実っておりました。
そのような環境の中でなに不自由なく暮らしておりましたが、しばらくするうちに下界でのあれやこれやがつい思い出されてはかぐや姫の心を揺さぶるようになりました。
大変質素ではあるけれども、手入れの行き届いたお爺さんとお婆さんの家。豪華さとはほど遠いけれど、お婆さんの愛情がたっぷり詰まった食事。そしてあの懐かしい竹林の匂い…。
かぐや姫は悟りました。自分が真に求めているものは、月での安逸な暮らしではなく、地上での人間らしい暮らしであることを。
そしてかぐや姫は今一度、下界に戻らんと決意するのでした。
あるところに翁あり。ある日竹林にて翁、光り輝く赤子に出会いけり……。
そしてまた、歴史は繰り返す。
完
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