1話 弓射る少年  

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カツッ、と乾いた音と同時に一本の矢が的を射た。  矢が刺さったのは中心のやや右端辺り。悪くない中あたりだ。続けてもう一本、弓を引く。 今度は先程よりも的の中心に矢が刺さる。 新しい矢を手にしてつがえると、僕は限界まで弓をしならせて引き、矢を 放った。 ―――(あた)る。 良い引きの感覚がした。 そして予想通り、矢は的のほぼ中心へと吸い込まれるように飛んで行った。 僕はホッと息を吐つくと、構えていた弓から片手を静かに下ろした。 久しぶりに道着に袖を通して弓を引いて、満足感でいっぱいだった。 誰もいない的場へ向かって一歩下がり、深々と一礼する。 すると、誰もいないはずの道場から突然、パチパチパチという拍手が聞こえてきた。 そちらを振り返ると、道場の入り口にいつの間にかブレザーの制服を着た女の子が立っていて、僕に向かって拍手をしている。 「良い引き、さすが(のぞむ)ね」 「――(ともる)
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