72人が本棚に入れています
本棚に追加
彼等のことを思えば、父に頼んで法的に手続きをして貰うのがきっと一番なのだろう。
でも――。そう決めようと決意すればする程、僕は心は悴んだように動かなくなっていった。
彼等ともう会わない、会えないというだけで世界は暗い灰色になってしまったようだった。
彼等の存在はどれだけこちらを明るく照らしてくれるものだったのだろうか。それをまざまざと感じさせられていた。
まるで僕の心根を反映したかのような雲天の雨音は止むどころか、益々強まるばかりだった。
どれくらいの間、そうしていただろうか？
ふいに視界の横に黒い影が在るのに気が付いた。
「――何をしている」
その声に、のろのろと首を巡らせると、何時の間にか黒い大きな傘に、黒いコート姿の男性が立っていた。
とても背の高い男性で、見上げなければ顔が見れない。
目だけを上向くと、思わず声が漏れた。
「……あなたは――」
最初のコメントを投稿しよう！