1話 弓射る少年  

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僕は子供の頃から、他の人には無い、特殊なことを二つ抱えていた。 一つは、「ある特別な力」があること。 これは世の中で僕と僕の家族と、極めて少数しか知らない秘密だ。 もう一つが、変わった持病を持っていること。 いつもは普通の人と同じく生活しているのに、ある日突然ふらっと意識を失くして倒れてしまったりするのだ。 原因は何なのか、未だ分からない。 体が弱いとか、病気というわけではないと思う。通常時は運動もできるし、その時に体が苦しいという感覚はないから。 でもたまにすごく飢餓感みたいなものを感じて、気付くと体が虚脱して倒れてしまうのだ。 脱水症状とかに似ていると思うけど、毎日ちゃんと水分もバランスの良い食事も取っている。 なのにその飢餓感は無くなることはなく、いつも定期的に襲って来るのだ。 そんな僕を心配した両親が、何年かごとに色んな病院に連れて行ってくれて、体をあちこち調べる検査を受けてみたけど、どこに行っても結果は同じだった。 『お子さんはいたって健康体です』 『特別な病気は見当たらず、体も特に異常はないようですね』 揃ったように色んな医者に言われ、結局、突然意識不明になる原因は未だに分かっていない。
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