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それで中学の時に、大事な団体試合の当日の朝に倒れてしまったことがあった。
僕はレギュラーメンバーだったのに、意識が戻った時には試合の翌日で、どうすることもできず、部活の先生や部員達に大きな迷惑をかけてしまったのだ。
部活の皆は僕の症状のことを知っていたから、『仕方ないよ』って言ってくれたけど、僕はそんなことになったことが自分で許せなかった。
その試合のために、皆が毎日どれほど一生懸命練習してきたか知っていたから。
だから僕は、高校に上がってからはどの部活にも入るのはやめようと思ったんだ。
僕のことで皆が大事な時に、支障が出たり迷惑がかかってしまうくらいなら、わざわざ部活なんて入らなくていい。練習ができるだけで充分だ。
「――これでいいんだ。色んなことを考えて、これが一番ベストなんだよ」
僕の答えに、灯は最高に不満そうだった。
「……つまんないの」
そう言って、そっぽを向く。
僕は苦笑いをして、彼女の頭にぽんぽん、と軽く手を置いた。
「心配してくれて、ありがとね」
「ふん、望なんか知らな―い」
そんなことを言いながらも、頭に置いた僕の手は嫌じゃないみたいだ。
灯が本当に嫌だったら、今頃容赦なく手を払われてるはずだから。
その日僕たちは久しぶりに、兄妹でじゃれ合いながら仲良く家に帰ったのだった。
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