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学校を出た僕と灯は、自宅へ帰るため駅へと向かった。
電車を乗り継いで、家の最寄り駅に降り立つ頃には、もう夕日が沈みかけていた。
灯のおしゃべりを聞きながら、家までの路を一緒に並んで歩いていると、遠くに僕達の前を歩く、一人の男子学生の後ろ姿を見つけた。
「あれって燿じゃない?」
灯の言う通り、長めの髪を後ろで一つに束ね、学生鞄を肩の後ろにかけてダルそうに歩くのはどう見ても燿だった。
二宮 燿。現在中学二年生になる、僕と灯の末の弟だ。
「相変わらず生意気そうな歩き方ね。―――おーい、燿~!」
灯が大きい声で呼ぶと、燿は鞄を落としそうになって、慌てて僕達のいる後ろを振り返った。
やけににこやかに手を振る灯を見ると、途端に嫌そうな顔をする。
燿は前に向き直り、僕達を無視して歩き去ろうとした。
だけど、その前に灯が素早く彼に追いつき、鞄をわし掴んだ方が早かった。
「なあに、その顔は? お姉ちゃんが呼んでるのに無視する? 普通~」
「――っおい、離せよ! て言うか誰が『お姉ちゃん』だ! 気色悪ぃ――」
本気で嫌がっている燿に対し、灯はむしろ喜々として絡んでいく。
灯は燿のそういう態度が可愛いらしく、よくちょっかいをかけるのだけど、弟はそんな灯が大の苦手のようだ。
いつも心底うざったそうに、灯と言い合いをしている。
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