母へ

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『母へ。先日はおいしい野菜と果物をくださってありがとうございます。私はあなたのおかげで生きていけると言っても過言ではないでしょう。私ができることはごくわずかですが、私からあなたへ肥料を送りたいと思います。本当にいつもありがとうございます。』 『あれからしばらく経ちましたね。私が送った肥料は役に立ったのでしょうか?さらに多くの野菜や果物のおかげで村も安泰です。私たちの村でも野菜と果物を育てることにしました。お世話になったあなたのために私たちはあなたを守る会を作りました。何かお困りのことがあったら対策をしていきたいと思います。なので、どうぞこれからもよろしくお願いします。』 『おひさしぶりです。こちらでは野菜や果物の品種改良が進んでいます。また人口も爆発的に増え安全・安定の生活がおくれています。そちらはいかがでしょうか?風の噂では一部の砂漠化が進んでいると聞きました。なので私たちからあなたへ緑を送ります。具体的には部隊を派遣し植林を行います。私たちとあなたの仲なので遠慮はなさらなくて結構です。では、また。』 『最初に謝らせてください。今回はすみませんでした。まさか私たちの出す排ガスがあなたにまで影響を与えるとは思ってもいませんでした。早急に対策会を作り対策を行いたいと思います。本当に申し訳ありませんでした。』 『改めて前回はすみませんでした。私たちの対策で排ガスの影響はかなり減ったと思います。そして今、私たちは大事な局面に立たされています。戦争です。しばらくはこちらにかかりきりになるので何もしてあげることができなくなってしまいます。申し訳ありません。』 『お久しぶりです。私たちは勝利しましたので、そのご報告をさせていただきます。勝利といっても辛勝です。しかし自分たちの蓄えが無くなったとき、改めてあなたの支えで持ちこたえることが出来ました。わずかではありますが勝利の記念にそちらの環境を整えたいと考えています。また部隊を派遣し、わずかながらな種をまく計画を実施する予定です。今後は私たちがすべてを纏めていく予定なので、あなたにもより充実した支援を送れると考えています。』 『敵国の人間が生き延びていました。テロです。まさか種の中に毒草の種と毒虫の卵を仕込んでいたなんて。急遽、対策隊を送りますがすでにそちらでは大規模な繁殖・増殖傾向のためどこまでくい止められるかはわかりません。こちらも最大限の知恵を出していくのでこの危機をともに乗り越えましょう!』 『増殖は少し落ち着きました。しかし今度は新種の病気のため人口が低下。さらに環境汚染も徐々に増加傾向にあります。毒草や毒虫の変異種も発見されました。こちらでは最大限の努力を続けていますが、どこまで耐えられるかはわかりません。一難去ってまた一難です。苦しいのはお互いでしょうがともに乗り越えていきましょう。』 『悲しいお知らせをしなければなりません、私たちはここを去ることを決めました。長年連れ添ってきた母と別れる判断は大変苦しいものでした、しかし私たちはもうここでは生きることが出来ません。最後に私たちからあなたへ、人が居た証として人類をかたどった像を送ります。腐食せず、何万年と残るよう作りました。いつの日か新しい人類がそれを見つけられることを願っております。さようなら。』  人類がすべて去ったのを見計らい、この場所に神が降りてきた。 「まったく、これほどまでいじり回してきた相手を見捨ててしまうなんて、身勝手にもほどがある。おまえはここまで尽くしてきたんだ、神の力でおまえの望みを一つ叶えてやろう。」  神の問いに少々悩む。 「神様。私は別に何もしておりません。もちろん困ったことも一度もありません。別に砂漠化が進もうと、排ガスなどで環境が汚染されようと、毒虫や毒草が増えようとも私はただここにいるだけです。母とも呼ばれていましたが別に母となったつもりもありませんでした。」 「ではこのままでいいのか?」  神が問う。 「このままでいいです。私は私。何も変わりないですから。」  神はその返事を聞くと姿を消していった。  誰もいなくなった母なる大地、地球には人類をかたどった像が一つ立っていた。
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