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「流石先輩。話が早い。
けどメインは茜というより、龍に任せた静希の事なんだよね」
三日月の翠玉の瞳は夏目の琥珀の瞳を射抜き微笑む。それと反対に夏目は真剣な表向で腰を屈めた。
「……多分、課長の予想通り。今まで視えなかったにしては適応が速すぎる。それに静希本人の口からは聞いてねえけど、俺の“これ”に関しても違和感を感じてた。まだ道具の妖力出力が低いから何とも言えねえけど、呪符も一通り使えた。決定付ける証拠は十分に揃ってたよ。俺が見る限りでは」
「……アイツ、私と梅雨が敵意見せた時怖気付かなかったのよね。ただ自分に向けられてるものって気付いてなかっただけかもしれないけど、普通は拳銃なんか見たらビビるでしょ?
なのに、少しもそんな素振りがなかった」
二人の意見に三日月は頷く。
「それは僕も思った。
術式開花すれば正体を探るヒントが多くなるけど、初心者の静希が妖力を自由に扱えるようには時間が掛かる。ここで『術式開花訓練』を入れても良いんだけどさ、いつも教官やってくれる世羅もいないから後回しにしようと思ってる。
それに七草、早苗、秤、みんな子供の時から術式が扱える。けどそれは想定された危険しか来ない箱庭の中でだ。
僕としては日常に溢れかえる霊の恐ろしさを知って欲しいんだよね
だから暫く実戦を入れようと思うんだけど」
「ま、早苗の事に関しては賛成。伊賀忍者の出でしょ。彼処は土地神が多い。けどそういう類も最近の信仰離れで低級霊、中級霊ぐらいの実力しか持たない。だから今回、高級霊に遭遇した時見えてなかったもの。
早苗はまず眼を鍛える事ね」
「七草の事はよく分かんねえな……近接弱そうな感じはするけど……
ただ俺の“これ”に正体は分かって無かったけど違和感は抱いていたから眼は良いんじゃねえか?」
「流石烏丸の出だね。僕は好きじゃないけど」
「何でそんな七草好きじゃねえの?初日だろ?御家柄?」
「別に七草の事は嫌いじゃない。烏丸家が好きじゃないの。
家柄二割の主観八割。まあ僕の話は聞かなくていいでしょ」
その時、扉が開かれ三人の意識は自然と扉へ向く。隙間からは純白の着物の裾が覗いた。主が雨ヶ崎だと判別する。
「お疲れ〜、梅雨」
雨ヶ崎はそれに見向きもせず、紅鉄の隣が空いているのにも関わらずソファーの側に佇む。
「座れば良いのに」
「そうよ。帰ってから座ってないでしょ」
「構わない。続けて」
変わらず無機質な面からも声からも何も読み取る事は出来ない。
「梅雨、秤と一緒だったでしょ?梅雨から見て秤どうだった?」
「判らない。ただ彼、妖力ではない。代わりに陰陽の力。割合が変化しやすい。けど前尋ねた時、六対四。経験浅い割に安定している」
「さっすが、秤。非陰陽師の家系なのに凄いね〜」
窓の外で一羽の烏が鳴いた。
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