第一章 陰陽寮「霊視特務課」

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開いた門から現れたのは、栗色の髪の青年。 静希達と同じように、着崩しているものの指定の制服を身に付けている。 (背、たっか!!!何cmだよ……) 二十代の平均的な身長の静希だが、その静希が少し見上げるぐらいで目線が合う。長い脚を持て余すように門の縁を超え、二人の前に立つ。 「あれ?まだ二人しか来てないの?集合時間午後四時って伝えたよね?」 「俺らはそう聞きましたけど……」 「取り敢えず、藍ちゃんの方に連絡入れてお願いするか…… まあいいや。改めて、君達の上司にあたる『三日月伊織(ミカヅキイオリ)』だ。 はい、君から自己紹介」 彼、三日月は静希を指差し選択する。 「葛葉静希です!よろしくお願いします!!」 「んー、元気。フレッシュ!はい、次」 「烏丸七草だ」 三日月は烏丸の姿を足元から傘の頂上までゆっくりと視線を沿わせる。 「君が課長の言ってた烏丸家の子か。僕、あそこの家系苦手なんだよね」 烏丸の気配が変わったのを、隣にいる静希は感じた。 針で刺すようなピリピリした空気が烏丸から流れる。 「まあ僕、仕事に私情は持ち込まないから安心して。……一通り自己紹介終わったけど他、二人は来る気配ないし先に君達案内しちゃおっか」 まるで自分の家を案内するかのような軽い足取りで敷居を潜り、『入って、入って!』と手招きする。一度、烏丸の方を伺ったが何を考えているか分かるはずもなく、言葉に従い敷居を超えた。 「七草は多分、家系がこっち系だから細かい事知ってると思うけど、静希は一般人だから一から説明させて貰うね」 烏丸が敷地に入ったのを見届けたように、門はひとりでに隙間を埋めていく。それを確認すると、先頭に立ち三日月は歩き出す。 「今日から君たちが働く『霊視特務課』は陰陽師というカテゴリーに属す、除霊師、巫女、霊媒師、声聞師(ショウモジ)あとは各々家系の仕事を持つ者で構成されている。七草とか分かりやすいその例だね。 陰陽師は陰陽寮の『律令官(リツレイカン)』によってランク分けされている。上から(カミ)(スケ)(ジョウ)(サカン)。上にいくほど仕事大変だけど給料高いよ〜。頭、目指して頑張ろう! ちなみに、僕頭だから。すっごい強いよ」 後半の一言に思わず、三日月を二度見する。 (精神年齢が男子高校生と大差なさそうなこの人が、一番上!? 強いの!?) 「静希、今すっごい失礼な事考えてたでしょ。強いからね?」 「……信じられないのも当たり前ですよ」 低めの声が新たに入って来る。だが周りに声の主と思われる人物が見当たらない。 (どこだ?誰もいないぞ……) 「非番の私を新人の遅刻で駆り出さないで頂けますか?」 頭上から突然、悲鳴と共に二人降って来る。素早く、三日月が動き、掌を重ね額に人差し指と中指の先を付け、何かを唱えた。 すると二人の周りにシャボン玉のような透明な膜が形成され、ゆっくりと重力に従うよう落ちてくる。 「お、随分早かったね!……けど新人は丁重にって教えなかったっけ?」 「今回のは確実に貴方方に非があります。新人に八つ当たりしたのは申し訳ないですが、大体時間を守るのは社会人の鉄則。 私が悪いとは思いませんよ。いい経験になったでしょう」 透明な膜は地に降り立ち、割れる。 それと同時に声の主と思われた人間が空中から出現した。
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