第一章 陰陽寮「霊視特務課」

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空中から現れたのはブロンズ色の髪を七三分けにした青年だった。ゆっくりと下降していき、何かから飛び降りるかのような軽い足取りで地に着いた。 三日月と打って変わって雰囲気は硬く、眉間に皺が寄っているからか威圧的に感じる。 「はぁ。この話をこれ以上長引かせるのもめんどくさい。 はい、僕の一つ下の後輩、『百鬼藍(ナキリアイ)』ちゃんでーす。藍ちゃんって呼んであげて」 「飛ばしますよ」 食い気味に三日月の言葉を遮った。友好的に肩に乗せられていた彼の手を振り払うと、静希達に向き直る。 「初めまして、新人の皆さん。 私から最初に言っておきたいのは『三日月さんのようにならないで下さい』それだけです。待ち合わせには遅れる、報告書は書かない、本来自分がするべき仕事を他人に押し付ける……と碌な事ないので」 悪びれる様子もなく、以前と変わらない口調で淡々と百鬼は言う。 「ねえ、酷くない?僕、先輩だよ?」 「確かに私の一つ上の先輩で、世に数人の頭の陰陽師です。 ですが社会人としては腐ってます」 「藍ちゃん、僕が優しいからって何でも言って良い訳じゃないからね」 「1ミリも優しいと感じた事はありませんが。 はぁ、もう用は済みましたね。私は帰りますよ」 「新人の皆さん、仕事でお会いする時はまた宜しくお願いします」と付け足すと、くるりと背を向ける。そして軽やかに空へと飛び去った。 意外と三日月は引き留めることもなく、呑気に「バイバーイ」と手を振ると彼らに向き直った。 「あ、そういえば遅刻した子達に自己紹介してもらってないね。 はい、じゃあ右からどうぞ」 静希は後ろを振り返る、こうやって改まって彼らの顔を見るのは初めてだ。 「えー、ゴホゴホン。藤林早苗(フジバヤシサナエ)、伊賀の方にある忍者の末裔だ。くの一った方が正しいか。女だからって舐めんじゃねえよ」 先に自己紹介をしたのは右側にいた紫髪の女性だった。 髪は後ろで丁寧に一つに束ねられ、制服の上からロングコートを身に付ける。 その隣に立つのは緑髪の青年だった。身長は恐らく新人の中で一番高い。 ボリュームネックのコートに身を包み、肌の露出が極めて低い。 「出雲秤(イズモハカリ)」 「え、それだけ!?」 三日月が驚くにも関わらず、出雲は一貫して冷淡な態度を貫いている。 (さっきの百鬼さんと似てる気がする……) 「というか二人とも遅刻の件で謝りない訳?」 「遅れたのはこんな山奥にあるのが悪い。こちとら、里から六時間近くかけて来てんだ。それぐらい許せ」 「先程の百鬼という者ならまだしもあんたには謝る理由がない」 「わぁお、傲慢。まあ今回は初回サービスで見逃してあげる。 今年は聞いてたけど金剛石(ダイヤモンド)の原石だらけだね。期待してるからね!」 (あれ……一般人ぽいの俺だけ?つか、こんなうじゃうじゃ怪しい奴いるもんなの?)
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