悠久の歌姫

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「そうだ、歌奈に渡しておきたいものがあるんだ」  時歴介入のタイムリミットは三時間、早めに用事を済ませておきたい。手提げバッグから箱を取り出し、テーブルの上に置いた。 「これは……何?」 「君からのプレゼント」 「え? どういうこと?」 「話すと長くなるから、とりあえずこれを君に渡しておきたい」 「開けてもいいの?」 「それは君のものだから」  怪訝な顔をしつつも、歌奈は箱を取り上げ、蓋を開けて中を覗いた。一瞬驚いた表情をしたかと思うと、次は少しだけ口元を緩ませた。   「え? 嘘、どうしたのこれ。私にくれるの?」 「最初から君のものだよ」 「何言ってるの、少し照れる。どこから手にいれたの?」 「……何が入っていた?」  彼女はそれを手にすると、俺に見せてくれた。金色に光るワイヤー状の巻物。 「ギターの……弦?」 「これはただの弦じゃない、ウェイブ(波動)メモリー(記憶)ストリングス()ウェイブ(波動)ギタリスト専用の弦よ」 「普通の弦と何が違うんだ?」 「その時出した音色をすべて記憶する、いつでも自分のイメージした音色と波動を再現することができる」 「あ、あの地球音楽祭で使われている装置のこと?」 「そう、四年に一度行われるあのイベントはただの音楽祭じゃない。地球上の空間波動を調律するアースウェイブ(地球波動)を奏でるのが目的。そこで音楽を演奏するのが世界中のミュージシャンの目標だし……私の夢」
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