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「必ず君はそこで歌うことになる」
「お世辞でもうれしい、でもそのためにはまず体を回復させないとなぁ」
うーんと大きく背伸びすると、あっと思いついたような顔を俺に向けた。
「やばい、なんか創作意欲が沸々と湧いてきた。この弦使って今弾いてもいい?」
「俺は別にいいけど……えっと、ここ喫茶店だし」
ネルドリップで丁寧に淹れたコーヒーの香りが、俺の鼻先まで漂ってきていた。
「マスター、いいかな?」歌奈がカウンター越しのマスターに問いかける。
「ここはライブハウスも兼ねているからね、もちろんいいよ、私も久しぶりに歌奈ちゃんの歌声が聴きたい」
「じゃあ、弦の張り替えやらないと。ちょうど傷んでたとこだし」
「私が後でやってあげるよ、これでも昔はプロだからね。ウェイブメモリーストリングスの調整もやったことはある」
マスターがコーヒーをふたつ乗せたトレーを持って、テーブルの前に近づいてきた。コーヒーを俺達の前に置くと、弦を受け取り照明の光に照らして観察を始めた。
「ほーう、これは……見たことない弦だな、七色に光っている。歌奈ちゃん、ギターケース貸して。張り替えやっておくから。二人はゆっくりとコーヒーでも飲んでいて」
「ありがとうございます、うわ、なんかわくわくしてきた。早く弾きたい!」
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