悠久の歌姫

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 彼女はあの弦を渡して、何がしたかったのだろう? 確かにいい音は出ていたが、過去の自分に贈る必要があったのだろうか。 「これってさあ、未来からの贈り物だって言っていたよね」 「うん」 「ギター弾いていて少し感じたんだ、未来を」 ……イメージが弦から伝わるということなのだろうか。 「今じゃないとできないことがあるって気づいた」 「それは何だろう?」 「……すごい照れるセリフだから。河原のほう、ちょっと散歩していっていい?」 「いいけど、俺あんまり時間がないんだ、少しだけ」腕時計に目をやる、あと三十分。  突き当たり交差点の信号が青になったところで、横断歩道を渡る。  土手の階段を上るとコンクリートの遊歩道が川に沿って、遠い果てまで続いていた。その先には幻影のように佇む複数の巨大パラボラアンテナ群。   「あれが空間を(けが)しているんだよね、私の体もそのせいで悪くなっている。……でもあれがないとみんな生きていけなくなってる」 「目に見えない公害だからね、環境破壊があるとわかっていても、誰も否定はできない」 「あんな得体の知れないもののために、自分の人生が台無しになるなんて、いや。それで決めたんだ、私がこの地球を守れないか? って。たぶん未来ではもっと酷いことになっていると思う。その時、私の歌で地球のリズムを取り戻してあげるの。自分で言っていて、ちょっと恥ずかしいけど」 「大丈夫、その役割を君は果たすことになるよ」 「またまたぁ、褒めてくれるのはありがたいけど、ちょっと怪しい感じだぞ?」
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