悠久の歌姫

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「ちょっ、それはまだだめだって」 「何々? あらすじ……ふーん、少女の未来を守るために過去改変の旅に出る物語? それで……歌で地球を救っちゃう? ぷっ、どこかで聞いたことのある話ね、これはひょっとして小説?」 「いや、俺趣味とかないし、なんかやれることないかなと思って」 「いいんじゃない、そういう私も誰も聴かないギターの弾き語りばかりやってるし」  そう言いながら、ノートのページをペラリとめくり、本文の冒頭を眺めていた。 「でも憧れちゃうね、こんなヒロインに私もなれたらいいな。あ、この一節いいかも、曲にしてみるか」  ギターケースを隣の机の上にドンと置くとカバーを開き、ギターを取り出すと膝を組んで椅子に座った。  ポロポロンとギターの弦を試し弾きすると、息を軽く吸い込み、歌奈は歌いはじめた。  あなたの声が聴こえる、あなたの夢を視る  どんなに辛い日々の中でも  あなたの指が奏でる、あなたの時を刻んでいく  それはまだ見ぬ世界へとつながっていく    もういやなんだ、いやなんだ、絶対いやなんだ  君の弱音なんて、聞きたくもない  もういやなんだ、いやなんだ、諦めるんじゃない  いつかきっと叶う、だってそれは君がつくる未来  君の歌声をただ聴いていたいだけ
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