悠久の歌姫

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 空を見上げる、台風の後の澄んだ空気のせいだろうか、群青色の青空が広がっていた。  俺は学生服を着たままの学校帰りだ、川のすぐ横にある遊歩道を歩いている。通り過ぎるジョギング中のお兄さんがお辞儀をしてきたので、俺も軽く会釈した。  道端に目を向けると、そこにひしゃげた空き缶が落ちていた。左手に巻いた腕時計に目をやり時刻を確認する。右手には彼女から渡された白い箱を持っている。  しばらく歩くと、右側に大きな建物が見えてきた――歌奈の入院している病院だ。  今日は久しぶりの外出許可が下りたらしく、「遊びに出るのに付き合ってほしい」と頼まれていた。ちょうどその迎えに行くところだった。    病院にたどり着くと面会手続きを済まし、エレベーターに乗って歌奈にいる病室に向かう。  病室の前に立つと、少し咳払いをしてからコンコンと扉を叩いた。 「どうぞ」という声が聞こえたので、扉をスライドさせて覗きこむ。大きな六人部屋にベッドが並んでいた。  歌奈はすでに着替えを済ませ、一番奥のベッドの上に座り込んでいた。 「はーい、久しぶり」  明るい笑顔で手を振る歌奈。彼女の前まで歩いていくと、周りの女性達からニヤリとした視線が集中する。 「そういうんじゃないんだよな」と心の中で呟く。自分と住む世界が違う、彼女は将来世界を動かすほどの有名な歌姫(ディーバ)になることを誰も知らない。 「調子はどう?」 「うん、たまに具合が悪くなるけど、今はウェイブアジャスター(波動調整機)付けているから大丈夫だよ」 首に取り付けられた銀色の首輪を指さした。
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