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「元気にしてた、みたいだね、やっぱり大人になったなぁ」 君は懐かしそうに目を細めた。 そして状況が今だ飲み込めず恐らくアホみたいな顔をしているだろう僕に近ずき両頬を優しく手で包み込む。 何度も忘れようとした甘い香りが鼻腔をくすぐる。 何度も、苦しくて、辛くて、暴れて、泣き叫んで、どんなに求めても、もう二度と戻って来ない愛しいたった一人の君。 君が居れば何もいらなかった。 あれは十年前。 僕と君がまだ18歳で19歳になる歳だった。 歌手を目指し上京して春に入学した専門学校で僕達は知り合った。 君は僕が18年間生きてきた中で知り合ったどんな女の子よりも、綺麗で可愛かった。 小さな輪郭の中には少し茶色掛かった黒目の大きな瞳、少し上を向いた小さな鼻、艶のいいチェリーのようにみずみずしい形のいい唇。 肌の色は透き通るように白くて、華奢な胴から延びている手足はお人形のようにスラッと長かった。 君の事を妖精のようだと言っているクラスメイトも居た。 可憐で人目を引くの容姿の上、気さくで愛嬌のある君はすぐにクラスの人気者になっていたよね。
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