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僕
その時、頬をくすぐるような風がフワッと舞った感覚があった。
換気のためにこのクソ寒い真冬に窓を空けたからだけではない、不思議な感覚。
気配を感じ咄嗟に後ろを振り返る。
つっかえ棒に掛かった洗濯物、簡素なテーブルの上の電気ケトル、出しっぱなしの季節外れの扇風機。
変わりない自室の風景だ。
けれど僕の思考は全く追いつかない。
突然目の前に現れた懐かしい君に。
今この部屋に君が居るのは、どう考えても明らかに不自然で。
「久しぶり」
僕の動揺を知ってか知らずか、目の前の君はおかしいほど自然にそう言って微笑んだ。
「ひさ・・・しぶり」
僕はロボットみたいに抑揚なく返すと目の前の君の小さな顔に不釣り合いなほど大きく愛らしい瞳を見つめる。
これは現実か?
夢か?
はたまた僕は自分でも知らないうちに死んでしまったのか?
ここはあの世?
いや・・・自分の部屋だ。
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