一章 水の都ウィスカネロ

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1.  ごうごうと炎は燃え盛っている。  木々は燃え倒れ、私達のテントを潰す。  ここでの生活を無かったかのように炎は全てを燃やしている。  熱い。皮膚が溶けている。痛い。血が蒸発する。  悲痛な叫び声が耳をつんざく。子どもの泣き声が次第に消えていく。嫌な匂いが充満している。私は目を閉じた。  ああ、また……。  次に目を開けた時には額に汗を掻いた彼が私を抱き、心配げに覗き込んでいる。  私は彼に爛れた手を伸ばす。一筋の涙が頬を濡らす。  ああ……、やっと会えた。
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