ヒーロー

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「敵です」 「状況は?」 「民間人が一人。動けないようです」 「わかった。巻き込むなよ」 「了解」 彼らはたった二人で瞬く間に敵を打ちのめした。 「おい、大丈夫か?」 「ははははい。あああありが」 「無事で何よりだ」 「このエリアに敵はもういないようです」 「そうか。では昼食後、(ただ)ちに出発する」 「ああああの‥‥‥」 二人は振り向いて民間人の青年を見つめた。 「あ、ありがとうございました」 「おまえもよくがんばったな」 「ぼ、ぼくなんか、なにもできなくて」 隊長らしき男が青年の肩をぽんとたたいた。と、青年がけたたましい悲鳴をあげる。 「すっすみませんっ! あなた方のお(うわさ)は前々から聞いていたのですが、お会いしたのは初めてだったので」 「気にしなくていい。このだ。誰でも最初は驚く」 食事を終え、二人は静かに去っていった。 「ちょっとタケシっ! いつまで寝てんの!? いっくら休みだってそう部屋でゴロゴロされてちゃ掃除もできないってぎゃぁぁぁぁぁ――っ‼」 「母ちゃんうるさいよ」 「ヤダヤダだから言ったじゃないっ! オヤツやら缶ビールやら置きっぱなしにしとくからでしょっ‼ それっだけは今すぐ片付けなさいよそれっだけは ほら早くっ!」 母は逃げるように部屋を出ていく。 青年は勇気を出してゴキブリの残骸に近づいた。 彼らがほとんどしてくれているので量は少ない。 「ぼくもがんばります! アシダカ軍曹殿」 気弱な青年の心に、彼らの勇姿は確かな足跡を残したのだった。
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